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dim. 05 mars 2006

るにん

 予告編を観た時から、思わず身じろぎを正すような威厳を感じていました。
 それゆえ、とても公開を楽しみにしていたものの、たいていこういうケースは期待を裏切られることが多いのです。

 結論からいうと、決してハズレの作品ではありませんでした。今年観る日本映画の中でもまちがいなく屈指の一作となるでしょう。しかしなにかが物足りない……。

 たしかに出演陣は一人ひとりが精一杯演技していました。
 新人の麻里也の熱演ぶりも特筆ものでしたが、とりわけ主演の松坂慶子が、ここまでやるのというくらい気迫のこもった演技を見せてくれました。
 モチーフもよし、シチュエーションもよし、ロケ地もよし、美術もよし。
 ……しかしなにかが物足りないのです。

 結論からいうと、この作品にもっとも重要な要素であるはずの飢餓感が欠如していたのです。
 たしかに、暴風雨のあとで粥にかじりつくなどのいちおうの描写はあります。
 しかし飢饉の凄惨さが会話の中でしか説明されておらず、また舞台の中心が、豊菊の住いであるいつも食料があるところということもあり、登場人物たちから飢渇感が伝わってこないのです。
 このため観る側は、たしかに自然は厳しいけれど住めば都ではないだろうか、命の危険を冒してまで脱出などしなくともよいではないかと考えたくなってしまうのです。
 豊菊や喜三郎だけでなく、流人ではないお千代までもが、そして少女から女へと成長した花鳥が女郎のような真似をしてまで男たちをたぶらかし島抜けをそそのかすのも、ひとえにこの飢餓感があってのこと。
 これが表現できていないのは片手落ちといわざるをえません。

 他にも、音楽が作品に負けているなどいくつかの欠点は目立つものの、この作品から非常に強い感銘を受けるのは、ひとえにこの作品に漂う格調の高さに他なりません。
 描かれているものは食欲と性欲という、ある意味では人間の原初的な欲望でありながら、オーラさえ漂っているような作品など、数少ないのではないでしょうか。

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