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dim. 07 mai 2006

虎の尾を踏む男たち ■黒澤明クロニクル~ 4

 黒澤明の数多い作品の中でも、十指に数えられる屈指の名作。
 世評はそれほどでもなく、半ば忘れ去られている作品という感もしますが、黒澤明の才気がフルパワーで遺憾なく発揮された作品です。
 終戦前後という物資も余裕もない時に、たった2幕仕立でこれだけの映画を作ってしまったのはスゴい。
 まず、勧進帳の話に、どうみても似つかわしいとは思えぬエノケンという狂言回しをからめたという発想が尋常ではありません。それもパロディではなく、まっとうな作品として作られています。こんなこと、ふつうはちょっと思いつきません。
 そしてこれがもののみごとに、見事すぎるくらい成功しています。まさに"脚本の黒澤"の面目躍如といっていい作品です。

 この作品を観ていると、エノケンが不世出の俳優だったことがひしひしと感じられます。
 前半の饒舌など、エディ・マーフィのマシンガントークもたじろぐくらいのものすごさ。エノケン一人の独演だけで、場の状況をすべて説明し尽してしまうところなどは、脚本の力にも負うところが大きいとはいえ、この天才に負うところも大きいでしょう。
 それでいながら、主役はあくまでも大河内伝次郎であることをわきまえ、脇でしっかりと支えています。
 のちの『乱』でのピーターなどと比べれば、その芸の差は歴然としています。
 エノケンの映画はそれほど観てはいませんが、彼の傑作の一つでもあるのではない
でしょうか。

 むしろこの作品でこっけいだったのは、主役であるはずの大河内伝次郎の方。
 戦時中で食料事情が悪かった時期とはいえ、さほど大柄とはいえず痩身の体躯は弁慶という役柄に似つかわしくありません。
 演じ方もまるっきりのマイペース。大河内演ずる弁慶というよりも、丹下左膳が弁慶を演じているという感じ。

 黒澤監督というと、制作費をふんだんにかけた作品だけでなく、このように制約ずくめの作品でもすばらしい映画が撮れることの見本のような作品です。

    黒澤明クロニクル バックナンバー
  1. 姿三四郎

  2. 一番美しく

  3. 続姿三四郎

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Commentaires

>ぷちてんさん

連載をお読みいただきありがとうございます。
このシリーズ、黒澤映画のすばらしさを若い世代の人たちにも知ってもらいたいので、原則ネタバレなしで行く予定です。
いよいよ戦後編に入りますので、お楽しみに。

Rédigé par: クリシェ | le ven. 19 mai 2006 à 20:21

いつも御世話になっています。

あちこち、覗かせていただいていましたら、黒澤明クロニクルを今アップされていると。

黒澤監督は、あまりにも有名で知っているつもりになっているのですが、殆ど見ていなくて、最近気になる映画を見ようと思い始めているところです。
黒澤明の世界を見てみたい、そんな気になります。
このクロニクル参考にさせていただきながら、見てみたいなあと思います。

Rédigé par: ぷちてん | le jeu. 18 mai 2006 à 08:04

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