酔いどれ天使 ■黒澤明クロニクル~ 7
記念すべき、三船敏郎の黒澤映画初出演作。もちろん主演を張っています。
三船敏郎はもともとはキャメラマン志望で、東宝へ入社試験を受けに行ったところ、係の人にまちがえられて俳優としての面接試験場へ連れられて行ってしまいました。そこへたまたま黒澤が来合せて、その異形の熱演を目の当りにして強引に入社させたとかさせなかったとか……。
こういう因縁がある出会いでしたが、すでに別の監督作品でデビュー済みであり、純粋なデビュー作とはいえませんでした。
とにかく三船敏郎がやたらとぎらぎらしていたのが強烈な印象に残っています。殺気立っている三船敏郎はこれがピカイチでしょう。
三船敏郎といえば、『隠し砦の三悪人』をはじめとする他監督作品でもお目にかかるような颯爽とした武士役か、あるいは三十郎役のように、腕こそめっぽう強いがどことなくひょうきんでいいかげんな野郎というような役柄が多く、他の監督作品を合わせてもこのようなヤクザやチンピラ役は意外とないものです。
そしてこれに対抗するかのように、志村喬が医師役として、黒澤映画としてはめずらしく激しい性格の役柄を演じています。
こういったコワモテ志村を、後年の『赤ひげ』での三船の役柄と比較してみるととても好対照です。
ということでこの作品、三船と志村という2大俳優が異色の競演をくり広げるのが最大の見ものです。
しかしながら他の黒澤作品と比して大傑作といえるかどうか。この作品を黒澤の代表作に挙げている人も少なくないようですが、三船敏郎と黒澤明の初顔合せという以外は特にみるべきものはありません。
とはいうものの、ある意味では後世のヤクザ映画にかなり影響を与えているのかもしれません。ヤクザ映画はあまり観たことありませんから断定できませんけど。
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