« 白痴■黒澤明クロニクル~12 | Accueil | M:I:III ミッション・インポッシブル3 »

mar. 25 juil. 2006

バルトの楽園

 戦前の軍隊は、武士道の名残りから、捕虜になることを潔しとしない風習がありました。その結果、敵国の捕虜は卑怯者とみなすこととなり、扱いは実にぞんざいでした。
 第二次世界大戦のときはもっとも過酷で、B級の戦犯裁判でもいろいろ取上げられ、戦後はオーストラリアをはじめとする連合国からの怨嗟の対象となったほど。
 この作品の舞台は第一次世界大戦下ですが、旧日本軍としてだけでなく、戦争史全体からみても例外的なほど捕虜に寛容だった収容所の物語です。

 あまりの厚遇に感激したドイツ兵が、終戦で彼の地を離れる時に演奏した第九が日本初演とのこと。
 あのような大編成のオーケストラと合唱隊の演奏ですから、演奏家や声楽家を募るだけでも一苦労なのに、楽器もごく一部を除きすべて揃えてしまったというのは嘘のようですが、どうもこれは史実とのことです。

 捕虜に対する軍人や周辺住民というと、普通は対立関係として描かれることが多いようです。名作『大脱走』などはまさにそうで、本来脱獄という"悪事"を敵国ドイツに対して行うことにより、無類のエンターティメントに仕上げた傑作でした。
 この作品は、こういう関係を、対立ではなく協調として描いています。
 冒頭に"悪い"捕虜収容所を登場させたり、脱走兵を登場させたりしてこういった緊張関係を取り除き、牧歌的な描写で終始さようとしています。
 しかし前記したような収容所ものの通例が頭にあるだけに、いつかこの均衡が破綻して捕虜の暴動が起きたり流血の惨事が起きたりするのではないかという緊張感が、例えかすかでも全編に重低音のように漂っていたことはとても気になりました。
 こういった緊張関係を完全に払拭するために、クライマックスの第九のシーンを冒頭に持ってくればよかったかもしれません。あるいはこの長大な曲を退屈させずに聴かせるために、フラッシュバックを用いるのも一法だったかも。

|

« 白痴■黒澤明クロニクル~12 | Accueil | M:I:III ミッション・インポッシブル3 »

Commentaires

トラックバックありがとうございます。(http://www.yawarakacinema.com/cgi-def/admin/C-010/cinema/tdiary/index.rbのほうです。)
本家サイト(http://www.yawarakacinema.com/)も、よろしくお願いします。

Rédigé par: やわらか映画~おすすめDVD~ | le mer. 26 juil. 2006 à 01:14

こんばんわ♪TB有難うございました♪

実話モノは自分も好きなんですけど、最初ドイツ捕虜に対する松尾の寛大な扱いには、ややフィクション性も感じてしまった自分です(^^;)
松尾の収容所でも少しくらい暴動や、ドイツ兵に対する不当な扱い等が描かれていればリアリティを感じる事が出来たかも?

Rédigé par: メビウス | le mar. 25 juil. 2006 à 23:26

Poster un commentaire



(Ne sera pas visible avec le commentaire.)


Les commentaires sont modérés. Ils n'apparaitront pas sur ce weblog tant que l'auteur ne les aura pas approuvés.



TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/95111/11090692

Voici les sites qui parlent de バルトの楽園:

» 『バルトの楽園(がくえん)』観て来ました!! [☆★☆風景写真blog☆★☆healing Photo!]
『バルトの楽園(がくえん)』鑑賞レビュー! 僕たちは 生きる歓喜を知った なぜか捕虜収容所で---- 製作国▶日本 上映時間▶134min( 2時間14分) 配 給 ▶東映 『交響曲第九番 歓喜の歌』 それは「苦悩を突き抜けて歓喜へ!」と叫んだ 楽聖ベートーベンの心の雷鳴であり 万人を兄弟として結び合う 気高き永久の賛歌であり たくましき民衆の凱歌である 撮影はドイツロケの他 3億円を投じて徳島県鳴門市に 忠実に再現さ... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 06:29

» 「バルトの楽園」 [四十男の鉄下駄映画修行]
「バルトの楽園」観て参りました。マツケン最高!と共に色々考えさせられる作品でした [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 06:37

» バルトの楽園(がくえん) [peruriの劇場映画鑑賞記]
[コメント]第一次大戦中に徳島県にあったドイツ兵俘虜収容所を舞台にした映画です。心温まる実話をもとにしたものの、脚本が弱くきっちりと描ききれていないのが残念でした。松平健さんが貫禄を示しましたが、「ヒトラー ~最期の12日間~」などに出演のドイツ映画界の大御..... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 07:28

» バルトの楽園 [まぁず、なにやってんだか]
クラッシック好きなので、ベートーベンの第九がらみの映画である「バルトの楽園」は観たいな、と思っていました。運良く試写会に当選し、本日観に行ってきました。 劇場でない試写会からかもしれませんが、戦争シーンはあまり現実味がなかったです。また、ナレーションがところどころ入りますが、ちょっと浮いているような気がしました。 なかなか気持ちが入り込めません。映画というより2時間ドラマを観ているような気持ちになってしまいました。 マツケンのファンにはとても向いている映画です。マツケン演じる松江が相当... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 11:15

» 「バルトの楽園」 [てんびんthe LIFE]
「バルトの楽園」 渋谷TOEI①で鑑賞 NHKホールでのプレミアのチケットがあったのですが韓国旅行と重なっていく事が出来ませんでした。譲ってあげた知り合いに「プレスは頂戴!」といって2部貰っちゃいました。で、金券ショップで封切り前から鑑賞券が5~600円だったのですが、その後行ったら400円まで下がっていました。なんで?で、400円で買った私です。 作品内容は思っていた事とは大分違っていました。第一次大戦でのドイツ人捕虜収容所長松江という人物像が描かれていました。こんな人本当にいるのかと思わ... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 11:50

» 『バルトの楽園』 (初鑑賞43本目・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆★- (5段階評価で 3.5) 公開初日の6月17日(土) 109シネマズHAT神戸シアター6にて 15:10の回を鑑賞。 [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 15:34

» バルトの楽園 [UkiUkiれいんぼーデイ]
年末になるとよく聴く『第九』には、こんな裏話があったのね[:拍手:] 今から87年前、徳島県にあった坂東俘虜(捕虜)収容所で繰り広げられる人間愛のドラマ。 そこで、日本で初めて『第九』は演奏された。 ちなみにタイトルの<バルト>はひげの意味。 ちなみに主人公・松江所長を演じる松平健の口ひげは、アートネーチャーの“ヘアーフォーライフ”だ[:!!:] 敵国兵への厳しい処遇が当たり前だった収容所の中で、松江豊寿(とよひさ)所長(松平健)の所だけは違っていた。 捕虜と... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 16:05

» 「バルトの楽園」、公開 [Mugen Diary]
6月17日に公開された「バルトの楽園」の情報を。 「きけ、わだつみの声」の出目昌伸監督が、第一次世界大戦中の徳島県鳴門市の板東俘虜収容所で起きた実話を基に描いた感動ドラマ。 出演:松平健(松江豊寿役)、ブルーノ・ガンツ(クルト・ハインリッヒ役)、高島礼子(松江歌子役)他 同映画の紹介がFLiX、CINEMA COMIN\' SOON、CINEMA TOPICS ONLINE(ストーリーが詳細です。知りたくない方はご注意ください)、ENAK、MSN-Mainichi INTERACTIVEに... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 18:58

» バルトの楽園(がくえん) [りらの感想日記♪]
【バルトの楽園(がくえん)】 ★★★★  2006/6/2 試写会 ストーリー 1914年、第一次世界大戦で日本軍は、ドイツの極東根拠地・ [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 20:11

» バルトの楽園(がくえん)/感想 [映画★特典付き前売り券情報局]
2006年06月17日公開の映画「バルトの楽園(がくえん)」を見ました。 一言で言ったら、学校で見せられる“教育ビデオ”のようでした。冒頭のナレーション・解説、古臭い演出、安っぽいBGM、まさに教育ビデオそのもの... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 20:45

» 映画「 バルトの楽園 」鑑賞 [C級セールスマン講座 ]
少年向・青年向・成人向・家庭向として、”文部科学省選定映画 ”となっていますが、絵に描いたように、ここぞとばかりに感動を誘う仕上がりになっています。高校の時、視聴覚教室で「 八甲田山 」を観に行きましたが、老若男女問わず、「 バルトの楽園 」もお薦めです。小..... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 21:11

» *バルトの楽園(がくえん)* [Cartouche]
{{{    ***STORY***                2006年    日本 “ムスターラーゲル(模範収容所)”が地上に存在した2年10ヶ月間の奇跡。 1914年、第一次世界大戦で日本軍は3万人の大軍を送り込み、ドイツの極東根拠地、中国・青島(チンタオ)を攻略した。この戦いに敗れたドイツ兵4700人は捕虜として日本に送還され、各地にある俘虜収容所に振り分けられた。ドイツ人捕虜達は、環境が劣悪な久留米の収容所で過酷な2年の時を過ごす。 1917年、全国12ヵ所にあった収容所が6..... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 21:47

» バルトの楽園(評価:○) [シネマをぶった斬りっ!!]
【監督】出目昌伸 【出演】松平健/ブルーノ・ガンツ/阿部寛/國村隼/オリバー・ブーツ/コスティア・ウルマン/大後寿々花/中山忍/高島礼子/市原悦子/他 【公開日】2006/6.17 【製作】日本 【ストーリー】 1914年... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 25 juil. 2006 à 23:21

» [映画・ハ行] バルトの楽園(がくえん) [「やわらか映画〜おすすめDVD〜」映画ブログ ]
[映画・ハ行] バルトの楽園(がくえん) 今回の映画は、「バルトの楽園(がくえん)」です。この作品の映画公開にちなんで、「バルトの楽園(がくえん)」の作品紹介について書いてみました。 (今回の映画レビューは、本家サイト「やわらか映画〜おすすめDVD〜」からの転載です。また、「やわらか映画〜おすすめDVD〜」では、今回の映画レビューを、公開後に、加筆する予定です。) 本作「バルトの楽園(がくえん)」は、第1次世界大戦中のドイ�... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 01:11

» 驚異の第九「バルトの楽園」 [再出発日記 ]
監督:出目昌伸出演:松平健、ブルーノ・ガンツ、阿部寛、國村隼、高島礼子、大後寿々花1914年、第1次世界大戦が勃発し、日本軍はドイツ軍の極東拠点地である中国・青島を攻略。この戦いで捕虜となったドイツ兵4700人は、日本国内12ヶ所の俘虜収容所に振り分けられた。劣...... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 07:54

» 映画のご紹介(144) バルトの楽園 [ヒューマン=ブラック・ボックス]
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(144) バルトの楽園-阻害されし者たちの映画だ。 松江(松平健)は、政府にたてつき、不毛の地へ強制移住を強いられた会津人のリーダーとして、辛い思いをこらえて必死に生きた父親の無念....... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 09:01

» バルトの楽園 [ジャスの部屋 -映画とゲーム-]
映画「バルトの楽園」の感想です [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 11:40

» 「バルトの楽園」レビュー [映画レビュー トラックバックセンター]
映画「バルトの楽園(がくえん)」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:松平健、ブルーノ・ガンツ、阿部寛、國村隼、中山忍、大後寿々花、平田満、板東英二、市原悦子、高島礼子、オリバー・ブーツ、コスティア・ウルマン、ホルガー・ハントケ、ヘ..... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 13:46

» 『バルトの楽園』を観た! [フニフニ★ホゲホゲ ]
バルトの楽園を観て参りました。 いやぁ……コレは良い作品でした。 どうもアートネイチャーのCMが印象強いせいか、館外に貼ってあるポスターを見るにつけ『あのヒゲはヅラ……ヒゲヅラなんだ』と呟いてしまいました。 ですが、映画が始まりますと、ンな事は意識外に飛ばさ..... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 26 juil. 2006 à 22:41

» シネマ日記 バルトの楽園 [skywave blog]
子供から大人まで安心して観られる、ヒューマンドラマ。出演者たちの顔ぶれやストーリーの展開に、安定感があります。まさに、文部科学省選定作品です。 第1次世界大戦中、徳島 [Lire la suite]

Notifié le le ven. 28 juil. 2006 à 07:49

» 映画「バルトの楽園」 [ちょっとひとことええでっかぁ〜♪]
松平健、ここでは白馬に乗った暴れん坊将軍ではなく、 自転車に乗って、交差点ごとに降りては方向転換しないと進めない、 やがてはこけて泥だらけになるちょっと情けない人でした(笑)... [Lire la suite]

Notifié le le dim. 30 juil. 2006 à 07:25

» 【劇場鑑賞65】バルトの楽園(がくえん) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
『第九』初演の地・坂東俘虜収容所 国境を越えた真実の友情がそこにあった なぜ、彼はドイツを信じようとしたのか。 [Lire la suite]

Notifié le le dim. 30 juil. 2006 à 21:42

» 『バルトの楽園(がくえん)』 [アンディの日記 シネマ版]
感動度[:ハート:][:ハート:]      2006/06/17公開   (公式サイト) 満足度[:星:][:星:] 【監督】出目昌伸 【脚本】古田求 【出演】 松平健/ブルーノ・ガンツ/高島礼子/阿部寛/國村隼/大後寿々花/中山忍/中島ひろ子/タモト清嵐/佐藤勇輝/三船史郎/オリヴァー・ブーツ/コスティア・ウルマン/イゾルデ・バルト/徳井優/板東英二/大杉漣/泉谷しげる/勝野洋/平田満/市原悦子 <ストーリー> 1914年、第1次世界大戦が勃発し、日本軍はドイ... [Lire la suite]

Notifié le le jeu. 03 août 2006 à 13:24

» 映画『バルトの楽園』 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
第一次世界大戦(1914~1918)のことが語られることは少ないが、海軍はマリアナとカロリン諸島、陸軍は青島のドイツ軍攻撃などで相応の戦死者が出た・・・ ハインリッヒ少将(ブルーノ・ガンツ)率いるドイツの極東根拠地青島の5千は3万の日本軍を果敢に迎え撃つが多勢に... [Lire la suite]

Notifié le le jeu. 30 août 2007 à 02:18

« 白痴■黒澤明クロニクル~12 | Accueil | M:I:III ミッション・インポッシブル3 »