天国と地獄■黒澤明クロニクル~21
有名なこだま号からの現金投げ下ろしのシーンは、迫力満点のひとことに尽きます。
あたかも自分自身が主人公になって、誘拐犯に操られいまにも車窓からカバンを投げ降ろさなければならないような気分を味あわせてくれます。
そしてそれに先立つ1時間近い密室劇も、退屈だという批判はあるようですが、自分にはかなり緊張感をはらんでいるように感じられました。
もちろん、上記のシーンをよりスピード感を持たせるために、その対比として意識的に落ちついた展開としたのでしょうけど。
相性悪いといわれていた三船と仲代の息もここでは見事に合っています。
黒澤は舞台経験はなく映画一筋の作家でしたが、この作品の前半部や『どん底』等を観ていると、かなり舞台志向があったのではないかと思わせます。
しかしこの映画、そこまでではないか、という感じもします。
子供が救出されて以降の展開は、確かにしっかりとした作りですが、とりたてて見るべきところはなく、黒澤作品の水準からすれば凡庸な部類に入るのではないでしょうか。
一番最後の山崎努の長口上も、最初に観たときは迫力を感じましたが、2度目の時はなんとなく過剰演技というように感じました。
一般的には黒澤映画の中でもかなり高い評価が与えられている作品ですが、他人がいうほど買っていないのは、ここら辺がひっかかるからです。
煙突からの煙だけはどうしてもピンク色にしたかったために採用したパートカラーも、それほどの効果とは思えません。
なおこのパートカラー、後年『踊る大捜査線 The Movie』でオマージュ的に扱われており、またパートカラーについては黒澤を敬愛するスピルバーグがその代表作である『シンドラーのリスト』でやはりオマージュ的に扱っていたことを付記しておきます。









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