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dim. 19 nov. 2006

父親たちの星条旗

 『プライベート・ライアン』を思わせる激しい戦闘シーンが繰りひろげられますが、その実は『シン・レッド・ライン』のような戦争の無常観を表現したもの。
 それも、戦争そのものの無常観ではありません。さほどの功績を挙げていないにもかかわらず英雄視されているという、分不相応の評価をされたことへの葛藤が描かれています。

 主人公たちの心理とはいささか異なるものながら、黒澤明『影武者』を思い出させられました。
 あの作品も、一介のコソ泥がひょんなことから武田信玄という大将軍の影武者を演じなければならなくなった苦悩がみごとに表されていました。
 クリント・イーストウッドといえば、出世作『荒野の用心棒』は黒澤明『用心棒』の盗作でしたし、最初のアカデミー賞受賞作『許されざる者』も『用心棒』の影響を感じさせるなど、黒澤映画は熟知しているはず。『影武者』にヒントを得ている可能性もかなり大きいです。

 しかしながらこの映画、正直申しあげてあまり主人公たちに感情移入することはできませんでした。
 もしも自分が主人公たちの立場に立たされても、おそらくこのような苦悩は感じないものと思います。
 英雄視されることは不本意きわまりありませんが、自分が英雄を演ずることによって戦時国債が捌けて戦費をまかなうことができるのだからそれでいいではないか、このような苦渋に耐えれば亡くなった戦友たちばかりでなく今なお最前線で戦っている同志たちのはなむけになる、むしろ戦場で戦うよりもはるかにお国のためになるはず、……こうドライに割り切ってしまうだろうと考えたからです。
 だからあの3人の主人公のなかに、苦悩する若者ばかりでなく、結果が正しければ手段はかまわないという考え方ができる人物が一人でもおれば、もう少し登場人物たちを細かく描き分けられることができ、物語に厚みが出ただろうと惜しまれます。
 もっともこの映画は、このようなデリカシーのない人間が観るような映画ではないかもしれませんけど……。

 それと、国債募集のためあれほど大々的な英雄キャンペーンを打ったのですから、それと併行してもうひとつの喧伝をしたはず。……当時日本が敵国を鬼畜米英と誹ったのと同様に、日本に対し悪逆非道の連中だと激しく罵っていたことは想像にかたくありません。
 この作品では、そういう日本批判は完全にカットされています。……まあ、アメリカの映画産業にとって日本は最重要輸出国家であるからしかたないのかもしれませんけど。
 個人的には、そういう実態も遠慮せずあからさまに晒してほしかったものです。

 老いてなお『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』と矢継ばやに傑作を発表しつづけてきたクリント・イーストウッドですが、この作品は次の『硫黄島からの手紙』と一体として評価すべき作品なのかもしれません。

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Commentaires

>とりこぷてらさん、ひなさん、コメントありがとうございました。

"人の噂も七十五日"を地でいくような映画でしたね。
今思い返してみると、とりこぷてらさんご指摘のように、ヒーローに仕立て上げられる様よりも、そこから突き落される無常観を描いた作品だったかもしれません。

Rédigé par: クリシェ | le jeu. 23 nov. 2006 à 08:54

はじめまして、TBありがとうございました。
確かに主人公に感情移入が出来るか、といわれると私もドライなほうなので移入は出来そうにありませんが、若者たちの苦悩は理解できました。ご指摘のとおり、ドライな人間も描くことにより、奥行きのある映画になったのではないかと思います。
硫黄島からの手紙をみることで、また感想が変わってきそうですね。12/9が待ち遠しいです。

Rédigé par: ひな | le lun. 20 nov. 2006 à 09:13

3人のうち、一人はそのように比較的割り切ってましたね。
しかし、用済みになると切り捨てられていく様は切ないものがありましたです。
TBありがとうございました。

Rédigé par: とりこぷてら | le lun. 20 nov. 2006 à 02:45

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Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 08:12

» 父親たちの星条旗 [UkiUkiれいんぼーデイ]
戦争に英雄など存在しない・・・。 これはまた、イーストウッド監督流のキレのある反戦映画が誕生しました! 61年前、太平洋戦争の激戦地となった硫黄島での戦い。 そこで写された1枚の写真。 勝利のシンボルとして英雄に祭り上げられた3人の兵士たち。 長引く戦争に国民が焦燥していた時、士気を鼓舞するために利用されたつかの間の英雄たちドク、アイラ、レイニー。 しかし彼らは自分たちが一番よく知っていた。 自分たちが英雄ではないことを・・・。 まず、戦闘シーンのすごさは... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 08:51

» 父親たちの星条旗 [【極私的】Movie Review]
原題…FLAGS OF OUR FATHER'S 監督…クリント・イーストウッド 出演…ライアン・フィリップ/アダム・ビーチ/ジェシー・ブラッドフォード 極私的満足度… △ 写真の裏に隠された真実 お恥ずかしい話なんだけど、この作品のプロモやトレイラー(予告編)を見るまで、実は..... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 10:07

» 『父親たちの星条旗』を観たよ。 [【待宵夜話】++徒然夢想++]
シェアブログ1571に投稿 ※↑は〔ブログルポ〕へ投稿するために必要な表記です。 「クリント・イーストウッドの監督作」とは知らずに観てみたかったな、と実は思う。 『父親たちの星条旗』 原題:"FLAGS OF OUR FATH... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 12:21

» 『父親たちの星条旗』 [ねこのあたま]
クリント・イーストウッド監督の硫黄島2部作の第1弾『父親たちの星条旗』の試写会に行ってきました。川崎にできたラゾーナ川崎の中にある109シネマズで開催されたので、映画が始まる前に少しブラブラしてみたんですけど、かなり広くて店舗数も半端じゃないし、ユニク...... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 16:26

» 「父親たちの星条旗」 [-☆ EL JARDIN SECRETO ☆-]
TOHOシネマズの注意案内ががらっと変わりました。今月からでしょうか。海賊版撲滅キャンペーンは相変わらずでしたが・・・。さて、いまやすっかり巨匠のクリント・イーストウッド最新作は、日米双方からの視点で描いた硫黄島2部作。まず公開されたのは、激戦の地に星条旗を掲...... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 20:11

» 父親たちの星条旗 [Addicted to the Movie and Reading!]
■ 池袋シネマサンシャインにて鑑賞 父親たちの星条旗/FLAGS OF OUR FATHERS 2006年/アメリカ/132分 監督: クリント・イーストウッド 出演: ライアン・フィリップ /ジェシー・ブラッドフォード/アダム・ビーチ/ジェイミー・ベル/バリー・ペッパー 公式サイ....... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 20 nov. 2006 à 22:38

» 「父親たちの星条旗」試写会 [Thanksgiving Day]
中野サンプラザで行われた、クリント・イーストウッド監督の映画「父親たちの星条旗」の試写会に行ってきました!! そうそう、今回は中野サンプラザに入るときのチェックが結構厳重だったんですよ。空港でやるような金属探知器によるボディチェックまでされたので、いけな....... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 02:39

» 「 父親たちの星条旗 / FlagsofOurFathers (2006) 」 [MoonDreamWorks]
監督 ・ 製作 : クリント・イーストウッド / 製作 : スティーヴン・スピルバーグ出演 : ライアン・フィリップ /ジェシー・ブラッドフォード / アダム・ビーチ / 脚本 : ポール・ハギス / 音楽 : クリント・イーストウッド公式HP   || 「 ...... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 15:03

» 父親たちの星条旗 (Flags Of Our Fathers) [Subterranean サブタレイニアン]
監督 クリント・イーストウッド 主演 ライアン・フィリップ 2006年 アメリカ映画 132分 戦争 採点★★★ 「コイツは、白いのも、黒いのも、黄色いのも、茶色いのも大嫌いなんだよ」 『ダーティ・ハリー』でハリーについて語られる言葉だが、イーストウッドその人を顕実に物..... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 15:16

» 映画:父親たちの星条旗 試写会 [駒吉の日記]
父親たちの星条旗 試写会@中野サンプラザ 「”英雄”と呼ばれるのがくるしい」 硫黄島での1枚の写真、英雄に祭り上げられた6人の内、生きて本国に帰れたのは3人だった。第二次世界大戦末期、日本はもうぼうぼろの状態だったのですが、アメリカでも戦争に対してここまで... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 16:37

» 父親たちの星条旗 [映画、言いたい放題!]
特別試写会のハガキが送られてきたんですけど 封筒の中にはそのハガキしか入ってなくて 果たしてそれがどうして送られてきたのか不明。 適当に応募したのが当たったのか? それすらも忘却の彼方。 でもラッキー。(^^) 太平洋戦争末期の1945年2月、硫黄島。 日本の領... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 20:09

» 父親たちの星条旗 [映画とはずがたり]
太平洋戦争の有名な写真、 「硫黄島・摺鉢山に星条旗を立てた6人の兵士」 の軌跡を紡ぎだした、 クリント・イーストウッド監督 渾身の戦争映画!! STORY:砲弾に襲われた山の頂に星条旗を掲げる 6人のアメリカ兵―。 1945年2月23日、太平洋戦争末期の激戦の真っ....... [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 23:10

» 「父親たちの星条旗」見てきました [よしなしごと]
 今年90本目(映画館のみカウント)は父親たちの星条旗を見てきました。 [Lire la suite]

Notifié le le mar. 21 nov. 2006 à 23:31

» 父親たちの星条旗 [Barbarossa Blog]
うん、戦争賛美でもない、「どちらが正義か」を殊更強調するでもない、なかなか骨太な作品に仕上がっていると思いますね。流石、イーストウッド御大。監督がイーストウッド、製作スピルバーグ、脚本ポール・ハギスって最強のタッグじゃないの。二時間半近くに及ぶ作品です... [Lire la suite]

Notifié le le mer. 22 nov. 2006 à 12:53

» 父親たちの星条旗(2006/アメリカ/クリント・イーストウッド) [CINEMANIAX!]
【新宿ミラノ座】 太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長引き、いたずらに死傷者を増やす事態に陥っていた。そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗が高らかに翻る。この瞬間を捉えた1枚の写真が銃後のアメリカ国民を熱狂させた。星条旗を掲げる6名の兵士、マイク、フランクリン、ハンク、レイニー、アイラ、ドクは一躍アメリカの英雄となるのだった。しかし、その後祖国に帰還したのはドク(ライアン・フィリップ)、アイラ(アダム・ビーチ)、レイニー(ジェシー・ブラッドフォード... [Lire la suite]

Notifié le le jeu. 23 nov. 2006 à 00:35

» 「父親たちの星条旗」英雄の存在しない戦争で英雄に祭り上げられた兵士の苦悩 [オールマイティにコメンテート]
「父親たちの星条旗」は太平洋戦争末期の1945年2月の硫黄島攻防戦をアメリカ、日本双方から描かれる事で注目の作品で、第1部はアメリカ側から描かれた作品となっている。攻防戦になると当然攻める側と守る側に分かれるが、今回は攻めて勝利したアメリカ側からみた視線...... [Lire la suite]

Notifié le le jeu. 23 nov. 2006 à 09:36

» 父親たちの星条旗 [シュフのきまぐれシネマ]
父親たちの星条旗  @ユナイテッドシネマとしまえん 11月11日(土) 公式サイトはコチラ ドキュメンタリータッチで真摯な姿勢が伝わる作品でした クールな印象を受けますがそれが彼らにとっては 戦争が日常であったのであろうと思わせます 当たり前... [Lire la suite]

Notifié le le jeu. 23 nov. 2006 à 15:04

» 『父親たちの星条旗』・劇場 [しましまシネマライフ!]
今日は『父親たちの星条旗』を観てきた。 《私のお気に入り度:★★☆☆☆》 硫黄島2部作のアメリカから [Lire la suite]

Notifié le le sam. 09 déc. 2006 à 20:00

» 父親たちの星条旗 [欧風]
28、29日、イオン下田TOHOシネタウンでの映画ハシゴ観、1本目に観たのは「虹の女神」。 そして2本目に観たのが [Lire la suite]

Notifié le le mar. 19 déc. 2006 à 18:41

» 父親たちの星条旗 [しーの映画たわごと]
イーストウッドの硫黄島二部作。楽しみにしていました。制作でスピルバーグも顔を出し、個人的にはなんとも言えない作品です。「硫黄島からの手紙」もレンタルし、2枚続けて鑑賞。しかし、この「父親たちの星条旗」は想像してたのとはかなりのギャップが……嫁さんは途中から...... [Lire la suite]

Notifié le le lun. 25 juin 2007 à 14:02

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