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mar. 05 déc. 2006

虹の女神

 岩井俊二プロデュース作ということで、見逃してはならぬと公開終了直前にスケジュールを無理して駆け込みました。
 まさにぎりぎりセーフという感じ。予想をはるかに上回る情感にあふれた作品で、これを見逃していたら一生の悔いになったのではないかと思いたくなるほどの作品でした。

 実質的に岩井俊二監督ないしは岩井俊二色のかなり強い作品ではないかと期待していましたが、まさにそのとおりでした。
 キャストとして、市原隼人、蒼井優、相田翔子などといった岩井作品ではおなじみの顔ぶれが揃っているばかりではありません。
 たとえば、作中で描かれていた映画撮影のシーンの中で、エキストラが地を這いずるシーンは『花とアリス』そのまま(蒼井優がオーディションを受けるシーン)ですし、作中にかすかに漂う独特の死生観はまさに『Love Letter』や『スワロウテイル』のそれを感じさせます。

 しかしとりわけ、音楽の使い方はまさに岩井俊二ワールドそのものです。オリジナル曲に満ちあふれる中に有名曲(通俗名曲といってもいい)をそっと置く手法はまさにお家芸。
 『Love Letter』での松田聖子「青い珊瑚礁」、『スワロウテイル』での「マイ・ウェイ」、『リリィ・シュシュのすべて』でのドビュッシー「アラベスク第1番」等がまさにそれですが、この作品でも「木星」を中心としたホルストの組曲「惑星」の使い回しは絶妙そのものです。
 「木星」は「ジュピター」として数年前カバーされ大ヒットしたことから、もはや手あかにまみれた曲といっていいでしょうが、その原曲をあえてぶつけてきたのは、そうとう思い切った試みです。
 智也があおいの家に駆けつけるシーンでいきなりこの曲が流れてきたのを耳にして、場違いではないかと訝しみました。ところがこれが伏線となり、最後の8mm上映のシーンで「惑星」の他の曲をみごとなアレンジでつないでいるBGMが、とてつもなく効果的に使われていました。

 『Love Letter』の系譜に属する作品ですが、あの作品では中山美穂の最後の一瞬の表情にすべてを賭けていますが、本作では虹の河川敷・部室・屋根の上・8ミリ上映と少しずつ情感を盛り上げ、そして最後の手紙と札の指輪の発見でほのかなクライマックスに達する手法は、また異なる感動を覚えさせてくれます。
 そして、智也があおいの指に一万円札の指輪をとともに手を握りながら空を見るシーンの美しいさはこの上ありませんでした。

 正直申しあげて、上野樹里などこれまでほとんどノーマーク状態でした。世評は高くコメディに強いことは認めるものの、地味な印象が強かったため、なぜこれほどまでに評価されるのか不思議に思っていたくらいです。
 しかしながらこの作品で、彼女の実力を十二分に知らしめられました。彼女であればこそここまで情感の漂う作品に仕上げられたものといっていいでしょう。
 まさに彼女にとって一期一会の作品といっていいかもしれません。
 また今回はワキに廻った蒼井優も、文字通り能のワキ方のように映画に微妙な彩りを与えていました。

 技術的なものについてはともかくとして、とにかく理屈なしにただただ感動を覚えた一作でした。
 例年になくハイレベルだった今年の日本映画の中でも最高の作品であるばかりでなく、自分にとってこの作品、過去何百本と観てきた映画の中でも、特別の作品となりました。そしてこれからも、本作にまさる作品などおそらく数えるほどしか見いだせないのではないかという気がします。

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Commentaires

>はるさん

コメントありがとうございました。

こういう作品に出会うために多くの映画を観ているといっていいような作品です。
熊澤尚人監督には、これからもこのような作品をたくさん作ってもらうことを期待します。

Rédigé par: クリシェ | le ven. 15 déc. 2006 à 07:21

こんにちは。大絶賛ですね。間に合ってよかったですね。

僕もこの映画は大好きです。まちがいなく今年を代表する映画であると共に、上野樹里の現時点での最高傑作、ベストプレイでしょう。

あまりヒットしなかったのが残念です。

Rédigé par: はる | le jeu. 14 déc. 2006 à 12:52

>八ちゃんさん

コメントありがとうございました。
4回もご覧になれてうらやましいです。(^^;
DVDになったら見なおしたいですが、やはりこういう作品はスクリーンで、それも広いところで観たいものです。

Rédigé par: クリシェ | le ven. 08 déc. 2006 à 05:47

こんばんはTBありがとうございます。
自分が気に入った作品を高く評価しているブログに出会うと、うきうきしてきます。
これほどまでにのめりこんだ邦画など、これまで泣く、自分でもびっくりしているくらいです。
上野樹里も、過去のどの作品より(同時期の幸福のスイッチよりも)輝いて見えました。
口に出して気持ちを伝えられない切ない心を見事にスクリーンごしに伝わってきたようで…
もう1回見たいくらいです…笑

Rédigé par: 八ちゃん | le jeu. 07 déc. 2006 à 21:34

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