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jeu. 14 juin 2007

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

 これは期待はずれ。
 大いに笑えたことは、今年観た映画の中で随一といっていいくらいですが、それも中盤まで。後半はかなり不快感も感じたことも事実です。

 ひとつは、あまりに下品なネタが多すぎること。
 あとでクレジットを見て、"オースチン・パワーズ"シリーズのスタッフが関わっていることを知り、なんとなく納得した次第です。
 "オースチン・パワーズ"シリーズも本当に面白かったのは"1"だけです。"1"もたしかに下ネタも満載でしたけど、かなり抑制がきいて下品さもすれすれの一線を保っているように感じました。このあたりのコントロールは"裸の銃を持つ男"シリーズと共通するところがありました。
 しかしながら"2"以降と同様に、本作ではいささか暴走ぎみではないかというのが偽りざる感想です。

 もうひとつは、こちらの方が重要ですが、身障者や女性に対する差別ネタが度を過ぎていること。
 ハリウッドコメディでは、身障者ネタをはじめとする人を見くだしたギャグを平気で繰り出すことが多いですが、たいていはきわめて上手に処理されており、不快に感ずることはあまりありません。しかしながらこの作品ばかりはそうでもなかったようです。
 いわゆる"おのぼりさん"ものですが、カザフスタンという文化のまったく異なる異国人の目からアメリカの文明風刺をするという趣旨らしいものの、果してそういう映画だったのでしょうか。
 自分の目からは、アメリカ批判どころかカザフスタンを未開の地と見くだすことに終始していたように感じられてなりません。

 たとえば身障者や女性への差別に対する取組みは、自分はアメリカは世界一すぐれている国だと考えています。あえて"アメリカ批判"でこういうネタを扱うのはなぜなのか。
 あるいは、主人公に差別ネタを乱発させることによって、アメリカにはまだまだ差別が残っているという手の込んだ技を繰りだそうとしているのかとも考えなおしましたが、こういう問題を警鐘させようとしているようにはとても感じられませんでしたけど。
 そして本当にアメリカを批判するならば、他国から視たアメリカの最大の負である銃問題やイラク問題などを大いに採りあげるべきでしょう。いずれについてもわずかながら触れているだけで、本格的な風刺にまでとても至っているとは思えません。

 こういうアメリカの痛い点をほとんど取りあげていないところからも、文化の異なる他国を嘲笑したおふざけとしか思えないのです。
 そのことはラストで、なんとカザフスタンをキリスト教化してしまうところにも顕れています。
 もっともよく調べてみると、カザフスタンはロシア正教会の影響もあって、カトリックとはいうもののキリスト教がまんざらないわけではありませんけど。
 ただし、主人公約の俳優さんが本当はユダヤ系であることは予備知識にありましたから、数多く登場したユダヤ人ネタは爆笑ものしたけど(それと国家の替え歌)。

 同じようなおふざけを売りものにしている近作としては、『jackass number two』とまさに対照的です。あれだけ下品なギャグのオンパレードだった作品ですが、徹底して自虐ネタを敷きつめていたため、笑いの質では格段の差となっています。
 コメディは大好きですが、紙一重のすれすれのところで不快に転ずる危険な毒であることをあらためて認識した次第です。


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