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sam. 08 sept. 2007

22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語

 大林宣彦にとっての世界観は、ノストラダムスの大予言にあるように、世界は21世紀を迎える前に終焉を迎えるべきものだったとのことなのでしょうか。
 こういう感慨は、終戦後に天皇が発した人間宣言でよき時代の終りを迎えたと解釈した三島由紀夫や、明治維新について同じような感想を持っていた永井荷風や司馬遼太郎と相通ずるところがあるように感じられます。

 さて映画の感想ですが、悪いところをならべるときりがないくらい。
 とにかくセリフが最初から最後まで説明調。それを、あまりセリフ回しのうまくない役者さんが棒読みしているようなところもあり、感興を削がれること少なからずでした。
 演技経験の浅い多くの新人や新鋭の起用が果してプラスになっていたかどうかは首をかしげざるを得ません。
 また、筧利夫のいでたちも「踊る大捜査線」シリーズの新城管理官そのまんまというのはいかがなものだったでしょうか。

 そしてこの作品の最大の瑕は、タイトルにもなっている表題曲の濫用。
 自分もこの曲は、ニューミュージック時代のJポップ最高傑作の一つと思っていますが、だからといって映画の背景に最初から最後まで流しっぱなしというのはいただけません。名曲であるがゆえに、隠し味として用いるべきではなかったのではと思います。
 たとえば、作中ではフレーズをちらつかせる程度に抑え、最後にフルコーラスを、それも極力オリジナル版で流すようにすれば、ひときわ感銘も深まったことでしょう。
 そもそもこの作品、フォークギターでの弾き語りとしては名作ではあるものの、オーケストレーションに向いているとは思えないのです。

 また、作品全体に流れる古色蒼然とした雰囲気もどうにかならなかったものでしょうか。
 「22才の別れ」が流行っていた頃のような擬古的な雰囲気を醸しだそうとしたのでしょう。
 しかしながら、たとえば花鈴の実家のシーンなど、50年前の地方の旧家という感じ。
 これではまるで小津映画を観ているようであり、またこういうお膳立てで村田雄浩がフォークギターをつま弾くところなど、ミスマッチの感さえしたものです。

 そうはいうものの、この作品かなり印象が強かったことは事実です。
 一つには新人の鈴木聖奈が、なかなかの存在感を示していたこと。まだ荒削りな面もありますが、今後どのように成長していくかが楽しみです。
 そして主人公についても、先に述べたような点も気になりますが、やはりこのクールさは筧利夫ならではのもの。たとえば阿部寛や堤真一では、こういう味は出せないでしょう。

 そしてこの作品の真の舞台といえる臼杵の街を最後にほんのちょっと登場させただけというのも粋な扱いでした。
 大分三部作の1つとはいうものの、前半4分の3以上は福岡を舞台に展開される作品で、大分は主人公たちの出身地としてしか語られません。
 臼杵はいつ登場するのかと思いきや、最後に津久見ともども登場し、しかもこれ見よがしな観光的な視点ではないところもまたうれしいところでした。

 それにしても臼杵という街、海沿いの急斜面に寄り添うように軒を並べる街という点で、映像で観る限りは大林宣彦の故郷である尾道にとてもよく似ています。
 なお余談になりますが、お恥ずかしながら、映画を観ている時には、臼杵と杵築を勘違いし、てっきり臼杵を国東半島にある小都市とばかり思いこんでいました。

 しかし全般的にいえることは、この映画の好印象の大部分は、なんといってもあの名曲に負うところ大です。……つまり、音楽を抜いてしまうと果してどれくらい残るものがあるだろうかと疑問に思うのですが。

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