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mar. 29 avr. 2008

潜水服は蝶の夢を見る

 ファッション雑誌の編集長として仕事にも遊びにも颯爽と生きてきたジャン=ドミニク・ホビーは、ある日突如として重度の脳梗塞に襲われ、左眼のまぶた以外の身体の自由をすべて奪われる……。

 重度の脳梗塞により全身の自由を奪われた主人公は、最後の表現手段である瞬きを使い必死にコミュニケーションを絶やさず、ついには書籍まで著します。
 もっとも残念なことに、主人公はあたかも上梓を待つかのようにこの世を去ることになるのですが……。

 一見すると、多くの人がご指摘されているように『海を飛ぶ夢』とテイストのよく似た作品ですが、よくみると訴えようとしているものはかなり異なります。
 3年前に観たスペイン映画は尊厳死を描くように見せて、その実展開しているのは痛烈な宗教(カトリック)批判でした。これに対し、本作は生や死の尊厳などではなく、生そのものを描こうとしているのです。
 だからむしろ、同じように全身の自由を奪われたことをネガティブ一辺倒に描いた『ミリオンダラー・ベイビー』の対極にある映画といってもいいかもしれません。
 もっとも『ミリオンダラー・ベイビー』は、身体障害そのものを描いた作品ではありませんけど。

 実のところこの作品、自分にとってそうとうに重い作品でした。
 私事ながら、母方の親戚は母をはじめとして祖母や伯母など多くの親戚が脳梗塞に見舞われてきました。
 このような遺伝性のみならず体質的にもコレステロールが常に高いなど、自分も将来的に脳梗塞を患う可能性がきわめて高い不安がつきまとわっているからです。
 この主人公は脳梗塞の中でも相当に重症であり、映画の中でもきわめてレアケースな症状である旨説明がされていますが、それにしても他人事とは思えませんでした。
 特に前半部の、主人公の一人称による描写は、人一倍重苦しく感じられました。

 一見奇妙なタイトルですが、"潜水服"を着せられたような身体の不自由さと、はそれにもかかわらず自由な空想力の象徴ともいえる"蝶"からきているようです。

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